根暗色白草食気弱男がナンパをやってみる @ki67

平日は理学研究者、休日は新宿スト師と、対極する二つの顔を持つThe根暗色白草食気弱男が紆余曲折しながら女に立ち向かっていくストーリー

1

飛んで火に入る夏の虫 

金曜日の夜  新宿が発するギラギラとした放射光の中でナンパをすることは日常化している。

閃閃と輝く人工光の中にも埋もれない可憐な光がここには波動している。

もはや虫の走光性のごとく、新宿の中に埋もれている美しい光子に自動的に体が引きつけられるki67であった。

その光子は惹きつけるだけの強い独特なエネルギーを帯びていた。

蛾が電灯の点光源に向かって放射状に飛行するように、ki67もうろちょろしながら、美しい光子、そして即という栄光を求めて必死にもがいていた。

 

道を歩いていると突然

閃光が眼球を共鳴した。

 

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花柄ロングワンピ、年齢は20代前半くらいか 小林麻耶のようなきれいな瞳

ki67は飛んで火に入る夏の虫のように瞬間的に声をかけた。

 

Ki67 「こんばんは! その服のお花綺麗ですね? ラフレシアとか?」

麻耶 「微笑」

 

反応は微妙  ki67の眼光を見てくれない こっちを見てくれ
反応を引き出し、聞く体制を作るためネタ系でリアクションを引き出す

ボールを投げつける

 

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「毎日コツコツコツコツお水あげるの大変だったっしょ?」

「笑笑」

「タネ いつ撒いたん? 30光年前とか?」

「違うー笑笑笑」

 

ようやく麻耶がこちらを向いて、言語的リアクションをとった。
しめた! 聞く体制ができたと判断し、すかさずおきまりの自己開示と相手の状況を聞く

 

どうやら会社の帰りでお買い物の途中だったらしい

 

相手の興味の対象を引き出すため、ユーモアを加えながら、具体的な情報を少しずつ問いかける

 

 しかし

 相手の警戒心が高いせいか、うわべな返答しか返ってこない。

具体的な情報を引き出せない。
まるで壁当て。

だが、特に相手の拒絶感は感じなかったので、粘っていく。


逆光に苦しんでいると相手が急に体を左に向け、某雑貨店の中に吸い込まれていった。

ki67も無意識に、手に届かない光を追って、店の中に入っていた。

まるでピカ版のピカチュウかぼくは笑笑?

 

ぴっぴかちゅー

 

「どこまでついて来るの?」

「いいじゃん  俺も雑貨見るの好きだし、隣で念仏唱えてるだけだからいいっしょ?
お!  あのボールペン おしゃれ! 明日お姉さん会社退職するんだろうから、世話になった人に配るといいよ」

「なんで退職笑? 勝手に辞表届け出すな笑」

「仕事は何? きこりとか?」

「違うよ  何きこりって!笑」

「新宿のそこの木 高級ベットの材料にもってこいだよ?」

「そんなわけ!!  」

 

ユーモアを加えて、相手に突っ込ませて言い合える関係を作り出す 

かつ

少しずつ相手の具体的な情報を引き出し共通点の発見、和める会話のネタを探って行く

 

しかし

 

「仕事は?  」
「営業みたいな」

「何年生きてんの 97年?」
「そうそんな感じ」

 

警戒心が強い子で具体的情報をなかなか引き出せない。
ほとんどの返答がうわべで、自身を包み隠している。まるでコールセンター苦情対応のマニュアルロボットだ。

厳しい状況だ。
しかし、社交性が高いからなのか?形式的対応なのか? 嫌な素振りは見せず淡々とマニュアル的返答を繰り返す。

 

ここからki67は考えた。

 

相手は過度に警戒しているだけで落ち着いたトーンで丁寧な自己開示し 警戒心を解くことをすれば、突破口が開けるはずだと

 

「もう帰る笑!」 

彼女は駅に向けて歩き出す

「僕も帰るわ でも、めっちゃ話したし、のど潰れそうだから、一杯のみに行かない?」

「ええーー笑」

「新宿のオアシス ”自販機“を知らないのかい? あそこの自販機 世界一うまい水が沸くんやで? 一滴味見しても損はしないで?」

 

打診通る

 

ki67は買ったオレンジジュースを片手に落ち着いたトーンで丁寧な自己開示、丁寧な対応で少しずつ駒を進めていく

そして、警戒心がやや解けてきたのか少しずつ、麻耶が自分から自己開示をする様になってきた。

二人の波長が近づいて行った。

10分くらい新宿のオアシスでお茶会をしただろうか?

頃合いだと判断したki67はカラオケ打診!

 

グダ

 

「なんか行きたくない理由でもあるん? 」
「ヘリウムみたいな美声すぎて浮いちゃう事気にしてるとか?」

「いや だって危ないじゃん いきなり仲間とか入ってきたら危ないし」

「なっっ?笑  入ってこない笑 ミジンコさえも入ってこないわ」

「しかも、ドラッグとか売りつけられたら怖い」

「なっっつ?????笑  バス酔い止めの薬あげる笑」


警戒心のベクトルーーーー笑笑笑


マジトーンで言ってくるから、こっちが怖くなる

なんやかんやユーモアで切り返し、カラオケインしたわけだが、、、、

カラオケに入ってからも、扉の外をチラチラ見ながら警戒し、廊下を通り過ぎる店員にいちいちリアクションを取る。

むうううう疲れるなーーーー

 

まあそれは置いといて
さてどうやって相手とさらに深く和むか?

 

ki67はいつも相手の奥底にある悩み、本性を深掘り、理解、共感してあげることで深い関係を築いていく。これは、人は自分のことを深く理解してくれる人に対して、信頼し好意を寄せるという心理学的手法に基づいている。

 

が、実際は

 

ki67自身もメンヘラで、相当な闇を抱えているので、純粋に相手の闇に好奇心が湧いている事に過ぎなかった。

 いつもなら間違いなく恋愛話をチョイスする。

だが、今の彼女は完全に身の内をブロックしているので、いきなり深掘ってもただの悪あがきに過ぎないだろう。深い話をさせるには相手に自分が理解してくれる存在だと認識させる必要がある。

 社交辞令が得意? 
上部な対応で無理してる感がある?
自分の素を出すのが怖い?

自分に自信がない?

 

Ki67は言葉を投げかけた

 

「麻耶ちゃんって社交的で気を使えて誰とでも会話できそうだけど、愛想振りまきすぎて疲れて、一人になるとめっちゃ疲れちゃったりしない?」
「修学旅行の帰りの電車でめっちゃテンション落ちて、一人で寝てる人でしょ?」

「えっっ!?  なんでわかったの? 今会ったばかりなのに! 」


ブレイクスルー 

心のガラスが割れる音が聞こえたぜ


「僕も実はそうなんだよ。自分に自信がないから、惨めな本当の自分を他人に見せたくない。
だから、自身を取り繕ってうわべでしか他人と接することができない」

「うんうん」

「でも、僕らは似た者同士! 何も恥ずかしがることはない。だから、この時間くらいは気を使うのを辞めて、リラックスして話さない?」

 

明らかに彼女の顔つきが変わった。なんというか少し幼く、やわらかい表情を浮かべた。主人の帰りを待っている忠犬ハチ公にそっくりであった。

 

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 「わん♡」


そこから

自身を取り繕うようになってしまった背景
彼女を取り巻く人間関係
恋愛の話を深くした

 互いの波長が完全に合わさった様な錯覚に陥った。

 

そして

 

いつもの三味線手相ルーティン(身体接近)
ヘアモイスチャールーティン(顔接近)
キス  ノーグダ
パイもみ ノーグダ

 

勝利を確信した。勝ち条件が揃った。

ここまで行って負けた事は皆無だった。

100of100。

完全に将棋で王を囲み、相手の降参を余裕ぶって待っている気分そのものだった。


Ki67は完全に油断しきっていた。


手を繋ぎカラオケを出たki67と麻耶は新宿のラブホへ続くいつもの道を颯爽と歩いていった。

 

この通りを自称Choo Choo通りと呼んでいる。

 

この通りを歩く時、いつもki67の頭の中ではchoo choo trainが流れ、頭をくるくるしていた。

 

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ちゃ ちゃーん ちゃ ちゃーん ♫

Fun Fun We hit the step step!

同じ風の中 We know W love Ohhhhhh!

Heat Heat beat’s like a skip skip

 

ときめきをはこぶーーよ

Choo Choo どぉぉーりぃーー♫


まだ知らないZone 目指すよ tonight

リアルな時が止まる edge of the time

誰も cry or smile

昨日 I forget

脱ぎ捨てて自由になる ごっとぉぉーとりぃぃぷぅぅーーーー♫

 

「ちょっと待って、これどこいくの?」

 

ーぅーーーーーーぅぅぅぅううう?

 

いきなり麻耶が表情を一変させて、繋いでいた手をぐいっと引っ張り前進を妨げる

 

いつものことだ


Choo Choo通りは歌舞伎町特有のギラギラ感の中ではわりかしおとなしめの通りで、警戒心をなるべく与えないためあえてここを通っている。
しかし、ラブホ直前になるとどうしてもギラギラ感が出てしまい、毎回直前で警戒心が上がってしまう。

だが、もう勝利は確信している。テキトーに流せば良い。

 

気持ちよく脳内で

チューチュー通りを歌わせろ

 

「ん? ふつうに前に歩いているだけだよ?」
「マグロは常に泳がないとダメなんだよ それと一緒だお♫」

「はい? どこ連れていくき? もしかして、どっか連れ込んで危ないことする気? 」

「危ないことって何?しないよ? ていうか 何考えてるの? 」

 

演劇のセリフの様にki67即グダ崩しフレーズを暗唱する

 

「麻薬買わせたりとか?」
「飲ませて臓器売られるとか」
「連れ込み先に仲間がいたりとかで酷いことする気でしょ?」

 

はい? なんて?

 

彼女は何を考えている?これは新手の形式グダか?それともガチで警戒してるやつか?
いやいや冷静に考えろ 流石にそこまで被害妄想かますやつは天文学的確率だ。
オレはキミと一夜のアバンチュールを過ごしたいそれだけなんだぜ?
アバンチュールの邪魔をしないでおくれ 一緒にヘブンを見ようぜ!

 

「私もう帰る! 明日朝早いし、信頼してたけど、詐欺師だったとは思わなかった」

 

突然

 

Ki67の手を振りほどき、来た道を帰り出す麻耶

突然のその光景に何が起こったか分からず茫然とするki67

 

……………????????

 

何が起こっている。状況が整理できない。歩で逆王手された気分だ。どういうことだ?
とりあえず歩を対処しなければならない。

 

ki67は慌てて麻耶追い越し、いつものフレーズ立ち止まらさせる
そしてユーモアと論理トークを交えて、その行動に対する原因の探索、そして得た情報を元に相手を口説いていく。
価値観を崩壊させていく。

 

今日も今日とて恒例の

口説き合戦の始まりじゃ!

 

しかし、信頼が失われたせいなのか(勝手に)ki67の即グダフレーズにまったく聞き耳を持ってくれない。また、ki67の方もあまりの事態に動揺を隠しきれず、演技力が必要な即グダフレーズの演技ができていなかったのだろう。

 

これは厳しい。。。。 

 

失敗という文字が頭をよぎっていた。

現在は金曜日の終電間際、麻耶を逃したら、BOSE帰宅は間違いない。
そのことよりも今起きた事態が受け入れられずショックが隠しきれなかった。

 

ki67はとりあえず引くことにした。引くしかできなかったという方が正しいかもしれない。

 

駅までの道中で会話しながらも、失敗するかもしれないという近い未来に震え上がっていた。

 

現在ki67は某凄腕ナンパ師達と即数チャレンジを行なっていた。

 

これは目標即数を定め、一定期間に即数が目標に到達できなかったらバツゲームを受けるというものだ。

 

ぶっちゃけ罰ゲームの存在なんてどうでもよかった。

 

それよりも今まで雲の上だった凄腕達とハンデはあるが同じ土俵でチャレンジさせてもらっている事に喜びを感じており、かつ、密かに彼らの即数を超えたいと思っていた。

 

それが現実的に無理だとしても、1即でも彼らに近づきたかった。

 

自分のやってきた5ヶ月の活動が無駄ではなかったことを肌で感じたかった。

 

実感したかった

 

出撃数が限られるki67は絶対に失敗するわけにはいかなかった。

 

女の子からしてみたら、知ったことはない。自身がチャレンジの標的とされていることなど

 

もはや、ki67がこの様な不純な理由で意気消沈していたとは微塵も思わなかっただろう

 

むしろ、自分が振り払ったことに罪悪感を感じたのだろうか?

 

途端に優しくなりki67を励ましてくる。

 

さっきは言い過ぎた。

 

ごめんと。

 

Ki67はほんとうにはちょろい。

 

女に生まれてたらナンパ師の標的にされていただろう。

 

不純な理由で落ち込んいるのに、こんなバカ誠実な事を相手から言われたら、本気で抱きたくなってしまった。

 

きゅんとした。

 

Ki67

落とされた

 


新宿駅某入り口に到着

 

麻耶が入り口に入ろうとした時、思わず手を掴んだ。

 

「帰る前に少しでいいから最後に俺の話聞いて帰って?」

 

Ki67の言葉に感情がこもっていたのだろうか? 

 

こういう時は何らかの伝達シグナルが男から放出されているのだろうか?

 

女は男の本気の熱意を汲み取る能力は遺伝子レベル、本能レベルでで刻まれている気がする。

 

彼女は少しだけだよと言って、耳を傾けてくれた。

 

ki67は完全に誠実モードになっていた。熱意があふれていた。

 

ルーティン、小手先など一切考えずに自分の素で口説いた。

 

恥ずかしながら、このシーンを数人のクラスタに目撃されていて非常に恥ずかしかった笑。。。。。

 

30分くらい必死に口説いていただろうか?

 

とうとう彼女の終電時間待近になり、彼女はki67を振りはらって、駅構内に逃げていく。

 

それを追いかけるki67

 

改札が見えてきた。惨めだ。もう流石に無理だろう。

 

そんな事を思った矢先、勝手に口が動いた

 

「最後の最後に言いたいことがある。後悔したくないから、最後の最後の最後言わせて!」

「何? 」

彼女の綺麗な目がこちらを向く

 

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「終電逃して今日は一緒に俺と過ごそう」

「ええー  それだけは無理 帰りたい 今度会おう ?ライン交換したし」

「それはやめたほうがいい後悔する」

「なんで?」

「俺はこれまでの人生の中で刹那な瞬間を大切にして生きてる。水の水滴が落ちる瞬間さえも」
「今度会えるとしても次からは2回目、初めて会って、その流れで夜一緒に過ごす瞬間はこれで最後なんだよ?一生の思い出になると思わない?」

「えー んーー そうかもしれないけど。。。。」

 

「平成最後の夏だよ!」

 

「この瞬間を逃したら後悔する。時間を巻き戻すことはできない!平成最後の夏!平成最後の夏! 思い出作ろうぜ?ええやん?」


「んーーーー   」

 

麻耶は考え始める。

 

今改札に行けばギリギリ終電に乗れる。

 

でも、彼女は改札に入らず立ち尽くしている。

 

そして、終電がなくなった瞬間

 

「まあいっか!!」 


「終電なくなってしまったし、仕方がない」

 

 

女の気分はまるでスコールのようだ

 

 

わけがわからない

 

 

だいぶ慣れてきたはずだが、この七不思議は一生理解できずに昇天するのだろうか

 

 

でも、俺は知りたい

 

 

遺伝子発現レベル、化合物レベル、たんぱく質レベル、シグナル伝達経路レベル

そんな理屈で捉えられる枠内での理解ではなく

 

夏の虫が

燃え盛る赤い炎に魅了され

飛び込み

死んでいくように

 

 

 


本能で

 

 


 


ki67